この経験は、いつか私たちの強さになる?

こんなこともあったね、なんて笑える日が来る?


……無理だよ。

絶対に、そんな日は来ないよ。


私は良い思い出として、律を思い出せないよ……っ。



これだけ傷付けて、苦しめておいて、出来るわけないじゃん。


律が想像してるよりもずっと、私は律を大切に思ってるよ。

それなのに、また利用して貴方を犠牲にしようとする私を、許さないで。




「……じゃあ行くね、律」

「ああ、行ってらっしゃい」





律に背を向けて、一歩踏み出す。


何でだろう。

同じクラスなんだから、これからも顔をあわせるはずなのに、どうしてこんなに悲しいんだろう。


永遠の別れじゃないのに、何で、私は泣いてるんだろう。




「茜!」



どこか切羽詰まったような声に呼ばれて、振り返る。




「りーー」





その先は、言葉にならなかった。