「さーて、この前の時とは服装が違うし写真撮っておくか」
そう言うと綺麗な弧を描いた、唇。
だけど、律は決して笑ってなんかはいない。
「本当は音声も欲しいけど、この距離じゃ無理だよなー」
「……数学準備室」
「ん?」
スマホを片手に、柱からバレないように二人を撮る律に話しかける。
「あそこなら、ドアの前に立てば中の音が拾えるよ」
そして彼が今、欲しいであろう情報を与える。
あそこなら、拾える。
だって、私はそうやって先生たちの関係を知ったんだから。
「サンキュ、茜」
あの瞬間を思い出したり、話したりするのは辛い。
胸の中にどす黒い感情が渦巻いて、苦しくてたまらなくなる。
だけど、それでもそれによって彼が少しでも笑ってくれるなら、良いかなと思えた。

![[短編]初恋を終わらせる日。](https://www.no-ichigo.jp/assets/1.0.794/img/book/genre1.png)