死者の思い出にひっぱられた・・・。


ルイリードは私に夢を見せた。
知らない間に息子を身ごもった。

でも、心のどこかで夢でなかったのなら・・・って考えたときがある。


こんなふうに愛し合ってルイフィスを授かっていたのかもしれない。

だが実際は、自分の体がどんな悦び方をしたのかも覚えがない。


フィアはそんな過去が頭をよぎったが、すぐに過去も今も何も考えられなくなってしまった。


「あっ・・・ああ。愛して・・るわ。アルミス」


「1回目が出たか。これからもっと言わせてやる。」


(夢じゃないのに、アルミスに操られていく・・・。
これが魔力なの?違う・・・これが本当のアルミスの姿。そうなんだわ。)


「ふふっ。そうだ。何の作りも飾り気もない俺を感じてほしい。」


(何も言ってないのに!心を読まれている?
やだ、これじゃ心まで丸裸にされてるようだわ。

あ・・・心も裸じゃなきゃいけないんだった・・・。)



「そういうこと。身も心もいただかないと、俺は覚醒しない。
いいコだ・・・いや、いい女になった。」


「ああっ!!愛してるっ。何もかも見せてるの・・・私に応えて。」


(何度でも応えて、何度でも求めるさ・・・君の意識があるうちにね。)


(聞こえた・・・わ。うそっ・・・こんなことって・・・。
だけど、うれしいと思う。

触れられたところすべて火照ってる。
それから、体の中心から火を噴きそうよ。熱くて、燃えてなくなりそう。)


暗闇が白々と明ける頃まで、言葉を口に出さなくてもひたすら通じ合い、お互いを求める2人だった。



2人はほぼ同じくして目を覚まし、アルミスはフィアに声をかけた。


「おはよう。つらくなかったですか?」


「えっ・・・アルミスがもどってる。」


「すみません、ややこしい性格で。
べつに何かに憑りつかれていたわけじゃないですよ。
私も男ですから、優位に立ちたかったというか、貪欲だったというか。」


「嫌じゃないです。俺様モードでどんどん求めてくるあなたも。」


「そう?だけど、もう甘やかしたくて仕方がないんです。
お店の方にきてください。コーヒーと朝食を用意してきますから。」


「はっ?ええーーー!?あの・・・ちょっと・・・アルミスったら・・・どうして?」


「待っています。やりすぎたみたいではずかしいんです。」


「ぷっ・・・ふふふ。・・・はい、お願いします。」



フィアは身支度をして、喫茶店へと移動した。
カウンター席にフィアの遅い朝食が用意されていて、アルミスはルイフィスをあやしていた。


「ここからが、今日の本題です。
ルイフィスに私たちの願いを聞き届けてもらわねばなりませんからね。」


「ええ。でも大丈夫だと思うの。
私たちの愛情をいっぱいに受けているルイフィスだもの、30分ほど10才になることくらい引き受けてくれるわ。

ねっ、ルイフィス・・・。この世界を守るために。あなたのパパが安らかに眠れるように、少しだけお兄ちゃんになれるわよね。」



「うぎゃま~ま・・・きゃははは。きゃきゃっ・・・いいよ、できるよ。」


「えっ!?うそ・・・今、しゃべったわ。
2才なんだから、言えてもおかしくないけど、はっきりとお兄ちゃんっぽくしゃべったわ。」


「ああ、よーーし!ルイフィス。パパと勇者になりに行こうか。
おまえの精いっぱいの勇気と力を発揮してくれよ。

私は君とママを絶対に守ってみせるからね。」


「うん。」


「よし、これならいける。決戦に臨める。

さあ、みんな!みんなの力を預けてくれ。アーティラス討伐に向かう!」



アーティラスの居場所はすでにわかっていた。
生家である王宮跡地だ。

そこで、不敵な笑みを浮かべるアーティラスの姿があった。


ときどき、体の痛みに苦しみながら、アルミスの登場をひたすら願っている男。


「さあ、早く来い。
おまえの健康体をいただいてしまえば、もうこの世界は俺のもの。ふふふふふ・・・」