「---っ!菖蒲?」


「まど・・・か・・? ほん、もの?」


 会いたかった人が目の前にいて、名を呼ばれる。


「当たり前だ。菖蒲こそ、無事だったか?」


 なんて優しい声色なのだろう。


 会いたくて、会いたくて。少しの間しか側にいられなかったけれど、こんなにも求めてしまう人。


「うん。でも・・・どうやって東峰院家から出られたの?」


「縁と茜という西園寺家の忍に助けられた。何とか俺だけ逃れられたが、あの二人が捕まってしまった・・・」


 苦渋の表情の円。


 どんなに悔しかろうと思う。


 どんなことがあっても、円ほどの実力なら自分ひとりで解決してきただろうから。