軽く微笑んで、『じゃあね』とばかりに、手のひらを向ける中村くん。
『あんまりふたりっきりにさせない方が、良いんじゃない?』
さっきの彼の言葉が、頭の中で繰り返される。
うん……そうだね。
あまりふたりを近付けない方が、良いかもしれない。
朝日は諦めるどころか、危うく気持ちを外に出してしまいそうになるほど、優衣を想っているみたいだから。
「どうしたの?」
小さく手を振って、ふたりを教室から送り出した優衣が、あたしに聞く。
「うん。あのね……」
日曜日に遊ぶの、やっぱりナシにしたい。……そう言いかけて、
「えっと……な、何だったかな? あれ?忘れちゃった」
あたしはとぼけたフリして、言葉を飲み込んだ。
分かってる。
朝日にとってのあたしは、好きな人を連れて来てくれる、都合の良い人間。
分かっている……けど。
優衣の存在がなかったら、あたしは朝日に近付くことさえ出来ない……だから。