正直言って、とても居心地が悪い。
朝日も、中村くんも。今日だけは早く帰って。……そう、思った時だった。
「ごちそーさん」
コトン。
小さな物音と、朝日の声。
見れば机の上には、空っぽになったプリンの容器が置かれていて。
「また来週よろしく」
一言。あたしに向かってそう残して、朝日は歩いて行った。
……何よ。
あたしが勝手に持ってきてる……みたいなことを言いながら、朝日だって『よろしく』とか、言っちゃってんじゃん。
そして、それは……あたしの作るお菓子に対してじゃない。
朝日がいつも待っているのは、優衣。
作ったばかりのお菓子と一緒に、あたしが優衣を連れて来るから……。
ふっと頭の片隅を過るのは、さっきそれを包み隠さず口にしようとした朝日。
馬鹿にしないでよ。
あたし、そんなに都合の良い女じゃないんだから。
「優衣……」
名前を呼んで、ゆっくりと顔を上げる。
朝日の背中を目で追うと、不意に中村くんと目が合った。