「大丈夫だった?」

朝日に聞こえないように、こそっと優衣が耳打ちしてきて。

あたしは「うん」と、頷いた。


練習を覗いていたのを見られ、焦っていたのを知っているから、きっと口止めに行ったとでも思っているんだろう。

間違ってはいない。
口止めもたぶん、ちゃんと出来たよ……でも。


教室に再び入った時の、ふたりの楽しそうな雰囲気が、一瞬でも出て行ったことを後悔させる。

ねぇ……


「何の話してたの?」

心の中で思ったことが、堪えきれずに声になった。

変に思われないように、精一杯の笑顔。

すると、「聞いて!」と、嬉しそうに話してくれたのは優衣。


「日曜日、石丸くんオッケーだって!」


「……え?」

ずっと顔を見れずにいたのに、優衣の発言に思わず朝日の顔を見た。


目が合ったのは、一瞬。
すぐに顔を逸らしたのは、朝日の方。

罰の悪そうな顔をして、頬が……少しだけ赤くなってる。