「じゃ、今日は解散!お疲れ様!」
「お疲れ様でしたー」
片付けが終わる頃に現れて、みんなの作ったお菓子を食べるだけ食べた、先生。
30代半ば、売れ残りだと影で囁かれる先生の、顧問としての仕事は食べることと、部活を終わらせることくらい。
挨拶を返したあたしは、グミの入った袋を持って、早々と立ち上がる。
隣に座っていた優衣は、何やらスマホの画面を一生懸命に見ていて。
「直大(なおひろ)さん?」
声をかけると、
「あ……うん。ちょっと電話するから、先に教室行ってて」
と、少し照れた様子で優衣は言った。
直大さんっていうのは、優衣の彼氏。大学3年生。
優衣が高1の時から、ずっと付き合っていて、あたしも何度か会わせてもらったことがあるけど、背が高くて、爽やかなイケメン。
それでいて気の利く優しい人で、優衣にぴったりな人。
「いいなぁー。相変わらずラブラブで」
「もう。人のことからかう暇があったら、早く教室行きなさい。……せっかくふたりにさせてあげるんだから」



