こっちを向いて、恋をして。


確認する余裕もなかった。

彼はすぐ朝日の後を追うように、走り去ったから。


「見た、よね? 今、こっち見て笑ったよね!?」

他に確かめる術がなくて、隣に立つ優衣に問いかけるけど、

「え? ごめん、見てなかった」

真相は闇の中。


でも、今度こそ見間違えじゃない。

彼はこっちを見てた。
そして、何を思ったのか、二カッと笑った。


「どうしよ……」

あたしだと気付かれてしまったかもしれない……と、心の中の声を漏らすと、

「悪いことしてるわけじゃないんだし、いいじゃない」

と、優衣は笑った。


……そう。練習を見ているだけで、別に悪いことをしてるわけじゃないんだけど。

あたしの気が少し重くなったのは、ここに優衣も来ているから。


ひとりで来るのは小恥ずかしくて、一緒に来て貰っているのに、こんなことを思うのは、自己中だって重々承知してる。

だけど、優衣が来てることを知って、やけに頑張られたりしたら……嫌だもん。


例えどんなにカッコ良くても、それが他の女の子の為だとしたら、それはあまり見たくはない姿で。