こっちを向いて、恋をして。


「さすがにあそこまでは聞こえてないと思うよ?」

と、優衣が苦笑する。

「うん……」

あたしもさすがに、今さっきの発言が聞こえたとは思わない。
なのに、ビクビクして隠れてしまった理由。それは……

“あたし達”が見ていたことに、気付いてしまったんじゃないかと思ったから。


念のため隠れたまま、じっとその人を見ていると、

あろうことか近付いて来たのは、朝日。


パンッとハイタッチして、軽く何かを話している様子。

『さっき変な奴が見てたよ』とか、余計なことを言われてないか、ヒヤヒヤしながら見ていると、

朝日はこっちに目を向けることもなく、すぐに走って行った。


良かった……。
やっぱり、気のせいだったみたい。

ホッと胸を撫で下ろして、植木の影から出ようとした……その時。


その人はまた、こっちを向いた。

そしてあたしと目を合わせると、


「わ、笑った……?」