こっちを向いて、恋をして。


「でも、朝日にゴール決めて欲しかったなぁ……」

チームメイトにハイタッチされているのは、他でもないシュートを決めた人。

こんなことを言ったら、団体競技が何たるものか分かってないと、色んな人に怒られてしまいそうだけど、

「あんなの、良いとこ取りじゃん……」

正直、そう思わずにはいられなくて。

どうせ聞こえないんだし……と、声に出した瞬間だった。


ハイタッチを受けていた彼が、突然こっちを向いた。

まるで、あたしの漏らした声が聞こえてしまったみたいに。


「やっ、やばっ!」

「えっ?」

優衣の手を引っ張って、慌てて植木の影に隠れる。

「どうしたの?」

と、優衣。

「今、あの人と目が合っちゃったかも……」

言いながら、そっとグラウンドの様子を伺うと、その人はもうこっちを見てはいなくて。

ただの偶然……?

でも。

しっかりと目が合ってしまったような気がした。