こっちを向いて、恋をして。


本当は靴に履き替えなければいけない場所を、上履きのまま歩く。

足場が土なら抵抗もあるけれど、コンクリートだし、晴れてるし。
何よりちょっとだけ……という気持ちが、あたし達を横着にさせる。


かけ声が聞こえて、グラウンドが見えて。

足を、ゆっくりと止めた。



「朝日!こっちこっち!」

グラウンドを走る男子が、手を上げ彼の名前を呼ぶ。

呼ばれた朝日はというと、同じく走っていて、その足元にはサッカーボール。

横に後ろに、人がいっぱい。

だけど、誰ひとり朝日からボールを奪うことが出来なくて。

「圭太!」

朝日は、さっき名前を呼んだその人に向かって、ボールを蹴った。

ズサッ!

ボールを止める音が、ここまで響く。

そして、

朝日からボールを受け取ったその人は、ゴールに向かって思いっきりそれを蹴った。