「んーっ!なってる!ちゃんとグミになってるよ!」
授業終わりに自販機で買って来た、ただのオレンジジュースだったはずなのに。
その変貌ぶりに感動して、隣に立つ優衣の肩をパシパシと叩くと、「良かったね」と微笑んでくれて。
「石丸くん、喜んでくれるといいね」
と、笑顔のまま続けた。
“石丸くん”
優衣の口から出た、彼の名前のドキッとする。
「う、ん……」
あたしは顔を赤く染めながら、少し濁った返事を返した。
料理は苦手。
お菓子作りなんて、以ての外。
優衣の手を借りないと、味がどうこうどころか、大爆発を起こしてしまいそう。
そんなあたしが調理部に入ったのは、甘い甘いお菓子を渡したい人がいるから。
その人は、あたしの作ったお菓子……
喜んではくれないけど。



