こっちを向いて、恋をして。


あんなに必死に見守っていたのに、結局プリンを鍋から取り出して、冷蔵庫へ入れてくれたのは優衣。

チラッと見た感じ、とても綺麗に蒸し上がっていた。


そして、冷えるまでまた待機。

プリンって結構難しそうに思っていたけど、意外と単純で……退屈。

ふと、先輩の方を見てみると、何やら課題のようなものをみんなでやっていて、そういうことか……と、納得した。


「ねぇ、優衣」

隣に座った優衣の、ブラウスの脇腹部分を、ちょこんと軽く掴む。

“ちょっとだけ外出よ?”

周りに聞こえないように、声には出さず、口をパクパクさせた。

返事は、“いいよ”。


みんなには、『教室に忘れ物したから、取りに行ってくる』なんて言って、ふたりで調理室を抜け出した。

向かう先はもちろん教室……ではない。

階段を降りて、校内の一番端。体育館へと続く渡り廊下を進む。

でも、その途中であたし達は廊下から外れて。