こっちを向いて、恋をして。


「え……?」

あたしの思考回路は、一時停止。

だって、ねぇ何、キスって。
唇と唇を重ねる、アレのこと?


「えっと、えっと……」

繋ぐ言葉が見つからなくて、オドオドとしていると、

「付き合って、もう一年近く経つのにね、まだ2回しかしたことないの……」

と、優衣は付け足した。

思わぬ助け舟。

「それで……そのことで、直大さんとケンカとかしちゃったの?」

「ううん」

ふるふると、首を横に振る優衣。


なに、それ。

じゃあ、上手くいってないって、優衣ひとりが思いつめてるだけってこと?

しかも、内容が……キスしてくれない?

本当、何それ。
深刻な状況を想像していたあたしは、肩の力が一気に抜ける。

贅沢すぎる悩みだよ……って、正直思った。


だけど、耳まで真っ赤に染めて、俯いた優衣の姿を見ていたら、本当に悩んでるのが伝わってきて。

そんなこと、とても言えない。