「おい」
「っ……!」
あと数歩で机……というところで、あたしの体はぐん!と、止まる。
振り返ると、少し高い位置に朝日の顔。
セーラー襟の後ろの部分を、まるで猫の首でも掴むかのように握られていて。
「何があった」
眉間にシワを寄せ、尋ねられた。
「何って……」
ドクン、ドクン、心臓の音がうるさい。
朝日が心配しているのは、あたしじゃない。分かるから、
「別に何もないよ」
襟を掴まれたまま、フイッと顔を逸らした。
するとその瞬間、体が急に軽くなって。
急いでまた振り返ると、後ろ姿。
『何もない』って言葉を、信じたわけではないと思うけど、朝日は自分の席へと戻って行った。
……諦め早すぎ。
無理矢理踏み込もうとされたら、とても困ったと思うから、助かった。
でも、こんなにあっさり引き下がられると、それはそれで何だか虚しい。
もっと構って欲しかった。
気にかけて欲しかった……なんて思うけど、
ぶんぶんと首を横に振る。



