「やっと起きたー?」

「大西先輩かわいい」

「ひかりって、ホントどこでも寝れるよねー」

先輩に、後輩に、同級生に、次々にかけられる笑いの混じった声。

「ご、ごめんなさい……」

恥ずかしさで顔を赤くしながら謝ると、あたしはまた椅子へとお尻を落とす。


セーラー服の上に、みんな色とりどりのエプロンを付けて。

漂わせるのは、甘い香り。

ここは放課後の調理室。

火曜日と木曜日の週2回、ここに集まってお菓子を作る。

あたし達は……調理部。


高校2年生、あたし大西ひかりも、みんなと一緒にお菓子を作っていた……はずなのに、いつの間にやら夢の中へ。

あまりよく覚えてないけど、綿あめの夢なんか見ちゃったのは、この匂いのせいかなぁ……。

それにしても、変な味だった。


……なんて、ぼんやりと考えていた時、ふと目の前の景色に、違和感を感じた。


いつでも帰れそうなくらい、綺麗な机の上。

あたし、片付けなんてしたっけ……?