「電話してきてくれて、助かったよ〜」
全く知らない、慣れない校内を歩きながら、「ありがとう」とお礼を言う。
その相手は……中村くん。
「いや実は、さっき朝日に頼まれてさ。誘ったのはいいけど、詳しいこと言うの忘れてたって」
一歩目の前を歩く中村くんは、「あいつ、何気に結構抜けてるとこあるよな」と、笑う。
「本当だよ。どこ行ったらいいのか分かんなくて、どうしようかと思った。ね、優衣」
「うん」
朝日に対して、ちょっと怒ったように言いながら、心の中ではホッとする。嬉しくなる。
それは、朝日のことを話す中村くんの表情がとても明るいから。
「そういえば、風邪ひいてたんだって? 大丈夫?」
「えっ? あっ、うん」
「でも何でこの時期に?」
「それは……」
「ちょっ! 優衣!」
素直に答えようとした口を、慌てて塞ごうとする。
でも、それは失敗だった。
中村くんは、にんまりと笑って。
「え、何か面白そう」
「は、はは……」
あたしに逃げ場はなくなってしまった。



