「ほんっと、バカだな……」

「はっ!?」

呟くくらいの小さな声。
だけど大西は聞き逃さず、声を上げる。

「もう何なの!? そんなこと言いに来たの!?」

顔を真っ赤に染めて、帰るとばかりに背を向けようとした大西。

だけど、

「っ……!」

その手を掴んで引き止めた。


本当は知ってる。

タッパーを押し付けた大西の手が、震えていたこと。

それに、今も……。


「な、何……」

戸惑った表情で、俺を見る。


冷たくされて、突き放されて。
傷付かないわけがない。

怖くならないわけがない。

それでも大西は……。


「あのさ」

「ん?」

「来週の試合、観に来てよ」

「え……?」

目を見開く大西。
ハッと何か気付いたように、視線をずらす……けど、

俺はそのまま、大西から目を離さない。


これでダメだって言われたら、諦めようと思った。

自分自身で決めた、ラストチャンス。


大西はもう一度、確かめるように俺の顔を見て。

そして……。