こっちを向いて、恋をして。


「ふたりで食べて。それじゃあっ」

ぐるんと背を向け、岩崎の腕を掴むと、

「えっ、ひかり?」

戸惑う岩崎の声を無視して、そのまま腕を引いて走り出した。



「何……」

遠ざかっていく姿を見ながら呟く。

俺の両手には、残されたタッパー。

「見せて見せて」

言いながら、圭太がフタを半分ほど開けてみる。

その瞬間、はちみつの甘い香りが鼻をくすぐって。


「わっ、うまそう!って……」

声を上げた圭太が、突然ピタリと固まった……と、思ったら、

「あー……」

言いながら、パタンとフタを閉めた。


「何?」

何だか少し落胆したようにも見える。

大西のことだから、失敗でもしてたか?
でも、はちみつレモンで?

頭の上に浮かぶ、クエスチョンマーク。


すると圭太は俺の顔を見て、少し寂しそうにも見える微笑を浮かべ、

「見てみ」とばかりに、タッパーを指差した。