こっちを向いて、恋をして。


まるで諦めたみたいな言い方に、不安になった。

それが多分、顔に出てしまっていた。


「だーいじょうぶだよ。朝日とはまたちゃんと話すから」

中村くんは苦笑して。

「それ、朝日に渡すつもりだったんでしょ?」

片手に持っていた紙袋を指差した。


「あ……」

部活で作った、ココアムース。

そうだった。
これを朝日に渡しに来たのに……。


「ごめんね」

「あっ、いや、別に朝日にっていうわけじゃ……」

何故か分からないけど、咄嗟に。
乾いた笑顔を浮かべ、否定するあたし。

すると、中村くんは、

「じゃあ、俺に?」

「ちがっ……!」

問いかけられただけ……なのに、

あたしは思いっきり、紙袋を彼から遠ざけていた。


「……」

何を……してしまってるんだろう。

ハッとして固まる。

だけど、時既に遅し。

「ふっ、ははっ!」

中村くんは吹き出して。

「さっき食べる?って聞いてきたくせに! 大西さん素直すぎっ!」

お腹を抱えて笑われた。