「人を好きになるのに、そんなハッキリした理由なんてないよね」

続けられた言葉に、「そうだね……」と、頷く。

朝日に恋をするまでは、『この人の、この部分が好き!』って、ハッキリ分かってから、恋に落ちるものだと思っていた。

だけど、実際は……どこが好きなのかなんて、さっぱり分からない。

すっごい意地悪だし、冷たいし。
絶対好きになりそうもない相手。

だけど、あの日の放課後から、あたしは彼に心を奪われている。

どんなにウザがられても、あしらわれても、笑って欲しくて、好きになって欲しくて……あたしは毎日、一生懸命。


あれ……?でも。

「優衣は……」

付き合ってるんだし、好きになった理由とか、ハッキリしてるんじゃないの?……って、言いかけて、口をつぐんだ。

目を向けた優衣の横顔が、少し寂しそうに見えたから。