こっちを向いて、恋をして。


「実はさ、レギュラーの先輩がひとりケガしちゃって。そんで来週末の試合、朝日が代わりに出ることになってんの。それを朝日は……」

言葉を濁らせる中村くん。
続きは、言わなくても分かった。

朝日はその役を、中村くんに譲ろうとしたんだ……。


「ほんと、間違えてるっつーの。あんまり鈍いから、一発くらい殴ってやろーと思ったんだけど」

中村くんは苦笑していた顔を、あたしへ向ける。そして、


「大西さんが言ってくれたから……もういいや。ありがとう」


とても優しく、微笑んだ。


「……や、あの……」

ちょっと待って。

嬉しい気持ちと、戸惑う気持ちが、ごちゃごちゃになる。

確かに、ふたりが喧嘩する姿は見たくないと思ったけど。

「あたしは何もしてないよ……」

ただ朝日に「間違っている」と伝えただけで、ふたりが仲直り出来たわけではない。

なのに、そんな顔……。
“もういいや”って……。