こっちを向いて、恋をして。


「……行って来る」

声を低くして。
まるで敵地へ乗り込むことを決めた武将のように、あたしは小さく呟いた。


もう嫌だった。
うだうだと悩むのは。

行ってしまえば、会ってしまえばきっと、なるようになるんだから。


態度を急変させたあたしに、ポカンとしていた優衣。

だけどクスッと苦笑して、「いってらっしゃい」と、送ってくれた。




……とは、言っても。

やっぱりすごい緊張するんですけど!


スーハーと、あからさまな深呼吸をするのは、サッカー部が使用している更衣室のすぐ近く。

廊下の途中でバッタリ会ったりしないかな……と、思っていたけどそれはなく、こんな所まで来てしまった。


手には、ひとつだけの紙袋。

中村くんと一緒だったら気まずいな。

うーん……と考えながら、更衣室のドアの方をそっと覗く。


部活を終えた男子達が、バタバタと出てくるのを想像していた。

だけど、ドアは閉まったまま。
開くような様子はない……っていうか。

カーテンの閉められた窓から、光が溢れるようなことはなく、

電気、ついてない……?