優衣の言う通り、渡したいのならさっさと渡しに行ってしまえばいいのかもしれない。
あれから何となく話づらくなって、中村くんとはそれほど会話をしていない。
だからこれを、彼に渡しに行く義務みたいなものはなくって。
どうするかは自分次第、だ。
なのにうだうだとして、行動することが出来ないのは……怖いから。
どうしてかなぁ。
前はこんなこと、思ったこともなかったのに。
渡したとして、朝日にどんな顔をされるのか……とても怖い。
あぁ、もう早く帰ってくればいいのに!
そしたら勢いで渡せちゃうかもしれないのに!
廊下の方へと目を向ける……けど、しんと静まり返ったまま、誰かが来る気配はない。
「……遅い」
隣の席には、荷物がまだ置いてある。
サッカー部の練習が終わっているのも、グラウンドを見て確認済み。
「遅すぎるっ!」
机の上に両手をついて、ガタンと音を立て立ち上がったあたし。
それを、少し驚いた表情で優衣が見る。



