こっちを向いて、恋をして。




「どうしよ……」

「渡せばいいじゃない。石丸くんに」


陽が沈みかけ、薄暗くなった教室。

机にうなだれ悩むあたしに、簡単でしょとばかりに返事してくれたのは優衣。


目の前には、もはや見慣れた紙袋。

中に入っているのは、さっき作ったばかりのココアムースと、保冷剤がふたつ。


「うーん……」

朝日の質問には別に、特別な意味なんてなかったのかもしれないけど。

『何作んの?』なんて聞かれたら、渡したくなってしまって。

でも、決定的な一歩が踏み出せなくて、こうして教室に優衣とふたり、留まっている。

かれこれ、30分近く経っているかな……。

「時間、大丈夫?」

「うん。特に何もないから、あたしは大丈夫だけど……」

水色で小花柄の、可愛いブックカバーのしてある文庫本から顔を上げ、微笑む優衣。

そうは言ってくれていても、待たせてしまっているという自覚はある。