こっちを向いて、恋をして。


「本当に?」

「本当に」

「……」

じゃあ、何を考えて黙り込んだの?と、喉まで出てきた質問を、飲み込んで席に着く。

大丈夫と言われても、腑に落ちない。

でも……。


「大西」

呼ばれて再び隣に目を向けると、

「今日は何作んの?」

「え……」

さらり。まるで挨拶と同じような感覚で訊ねられた質問に、今度はあたしの方が驚いて口ごもる。


「えっ、えっと……ココアムースだったかな?」

「ふーん」

「……」

……ふーん、て。
何なの。どういう意味。


言いかったけど、言えなかったのは、この後すぐにチャイムが鳴ってしまったから。



聞きたいこと、踏み込んで聞いてしまうことが出来ないのは、

何となく良い雰囲気の“今”を、壊したくないからだった。



授業中、教科書に隠れて隣の朝日を盗み見る。

笑いかけて、優しくしてくれるのは、あたしが朝日を諦めて、“友達”になったから……?


……たぶん、きっとそう。

勝手に自問自答して、あたしは小さくため息をついた。