「あーもう何なのっ!? 人がせっかく優しく話してあげたのに!」

片手はケータイを耳にあて。
空いたもう一方の手で、枕を壁に投げ付ける。

自分の少し恥ずかしい過去まで晒して話したっていうのに、『嫌い』っていうひと言で済まされてしまった。

「気持ち分かるって言ったの、そっちのくせに!」


ほんの数時間前、本人に直接ぶつけられなかった感情を、思いっきり吐き出す。

……いや、その時はこんなこと、あまり思ってはいなかったんだけど。

怒りは後から込み上げてきたんだけど。

そんな、ちょっと迷惑ともとれる怒鳴り声を聞かされているのは……。


『うん、まぁちょっと落ち着いて』

声だけで、苦笑いされている表情が浮かぶ相手は、優衣。

『結局ひかりは、中村くんと別れてはいないってことだよね?』

「……」

聞かれて、ベッドに腰掛けバタバタ動かしていた足を、ピタッと止める。