「だって、今日ずっと練習見てたけど、朝日とサッカーしてる中村くん、すごく楽しそうだったよ」

嫌いな人と一緒にいるようには、とても見えなかった。

練習中、中村くんは朝日のことを心から信頼しているように見えて。
それは朝日も、同じで。

その光景に、ホッとした。

どうして中村くんが、朝日のことを『嫌い』って言うのかは分からないけど、それは心の底からの気持ちじゃないって、分かったから。


「中村くんが本当に嫌いなのは……」

続けようとしたあたしの言葉を、中村くんがフッと鼻で笑って、遮る。

「何それ。そんなんじゃないよ」

言うと、食べかけのカップケーキを押し込むように口の中に入れて、


「俺はただ本当に嫌いなだけ」


中村くんはベンチから立ち上がった。