こっちを向いて、恋をして。


今でも忘れない。

学校から帰って来て、アニメ番組を観ていたら、ピンポーンってチャイムの音がして。

「優衣ちゃんが来てるわよ」ってお母さんに言われて、すごくびっくりした。

何だろう。
あからさまに避けていることを、もしかしたら怒られたりするかもしれないと、ビクビクしながらドアを開けた。

すると、そこにいたのは……優衣のお母さんと、にっこりと笑顔を浮かべた優衣で。

その手には、見た目はとても美味しそうなパウンドケーキ。

……でも。


「にんじんが入ってるって聞いて、嫌がらせかと思った。にんじん、すっごい嫌いだったんだよね」

ちょうどその日も、給食で出たにんじんを残していたら、先生に怒られて。

同じクラスだった優衣は、当然それを知ってて。

何て嫌な子だろう……って、思った。

だけど、優衣のお母さんもいる手前、「いらない」って突き返すことも出来ず、

「食べてみて」って、屈託のない笑顔で言うから……。


「仕方なく、ひと口だけかじってみたの。そしたら……」