こっちを向いて、恋をして。



「大西さんは何も知らないってことだよ」


躊躇う様子もなく返された言葉に、あたしは口ごもる。

一緒に過ごした時間も、場所も違うから、知らないって、その一言で済まされたら、何も言えない。

ただ……でも。


「……こんな話、あたしにしちゃっていいの?」

朝日のことを好きなあたしに。

「そうだな」

中村くんは、ゴミだけになったトレーを持ち、立ち上がって。


「大丈夫でしょ。大西さんは俺と別れたり出来ないはずだから」


にっこり笑った。


「……」

トレーをゴミ箱へと持って行く中村くん。その背中を、黙って見つめる。


悔しいけど……確かにそう。

最終的に『付き合って』と、言ってしまったのはあたしだから。

あたしの方から一方的に別れを切り出すことなんて、出来ない。

それに……。