バタバタと、校舎の階段を駆け降りる。

尋常じゃないくらい、胸の鼓動がバクバクして苦しい。


何で……。

何で朝日があんな顔するの?


玄関に差し掛かった所で、やっと足を止める。

息が切れて、顔が熱い。
さっき掴まれた腕も……熱い。


状況が、意味が、よく分からなかった。


クッキーを渡したら、朝日は無言で。

きっと迷惑なんだと思って、その言葉を聞く前に、自分から背中を向けた。

そしたら、急に腕を掴まれて……あんな顔。


寂しそうな顔をするから……。


「ーっ……」

声にならない声を漏らし、両手で顔を覆う。

ダメだよ、期待しちゃ。
朝日があの表情を向けた相手は、きっとあたしじゃない。

会えなくなって、寂しいと思われているのは優衣。

だから、優衣に会いたくて、朝日はあたしを引き止めた。

……うん、そう。

そう考えた方が、自然。
ずっと納得がいくと、自分でも思う……のに。