岩崎のこと、思いやるフリをしながら、結局は逃げていただけ。
何もしていないのに、無条件で傍にいてくれた大西の存在に甘えて、自分の気持ちから逃げていた。
そしてそれは、今も……。
大西は一体、どんな気持ちだったんだろう。
岩崎のことしか見ていなかった俺に、どんな気持ちで『好き』って言っていたんだろう。
あんまり軽々しく言うから、深く考えたこともなかったけど……。
ふと脳裏に浮かんだのは、泣き顔で。
本当に心から想っていてくれたことは、痛いほど伝わってる。
だから……。
大西の気持ちを考えれば考えるほど、胸の奥が苦しくなって。
片手に持った紙袋の中のクッキーが、とても大切なものに、愛おしく思えた。
最近ずっと大西のことばかり考えてる、その理由はもう分かっている。
2日前、岩崎のくれたロールケーキより、こっちの方が重いから。
俺は多分……大西のことが好きなんだ。