食べられないほどではなかったけど、やたら黒く、全部がココア味みたいになっていた。
実際それは苦かったし、唐突な告白も信じられるものではなくて、嫌がらせか何かだと思った。
でも、その日を境に付きまとわれるようになって。
毎週2回、調理部で作ったお菓子を、わざわざ渡しに来るようになった。
『朝日のために作ったんだよ?』とか、『朝日好みの女の子になりたいの!』とか、正直ウザく感じたこともあったけど……。
……あぁ、そっか。
俺が岩崎のことを冷静に思えるようになったのは、大西が現れてから。
自分の気持ちを知っていてくれる人が出来たこと。
そして、俺のことを好きだと言い続けてくれたから……
ひとりじゃないって、妙に安心出来ていたんだ。
形は歪だけど、とても綺麗に焼かれたクッキー。
成長してないとか、俺が言える資格はない。
大西はいつも、不器用ながらも頑張ってくれていた。
それに引き換え、自分は……。



