「何だこれ」
袋の中から取り出した1枚に、ポカンと口を開ける。
うさぎ……いや、ネコか?
ハッキリしないけど、耳のようなものが付いていて、かろうじて動物であることだけは分かる。
袋の中をよく覗いてみれば、そんな歪なクッキーが幾つか紛れ込んでいて。
「全然成長してないじゃん……」
苦笑いしながら、それを口へと運んだ。
だけど……。
サクッ。
噛んだ瞬間広がったのは、甘さとほんの少しの塩っぽさ。
前言撤回。
“美味しい”と、素直に思った。
そして、
何故だかとても寂しくなった。
思い出したのは、あの日の放課後。
初めて大西に『好き』だと言われた、あの日……。
『あたし、あんたのこと好きになっちゃったかも』
そんな言葉と一緒に渡されたのが、クッキーだった。
形は、やっぱりこんな感じ。
何が何の形をしているのか、よく分からなくて。
でも、それ以上に気になったのが……焦げていたこと。



