それが誰のものかは分からないけど、
「えっと……あの、ごめんっ」
大西は何か思い出したかように言うと、手を振りほどき、出て行った。
さっきの足音と合流するわけでもなく、そのまま遠ざかって聞こえなくなる足音。
何でもいいから、逃げたかったのかもしれない。
何故なら、掴んだ大西の腕は、微かに震えていた。
てか俺、何やってんだよ……。
急に力が抜けた感じでトンと、後ろにあった机に腰を預ける……と、
カサッ。
何かにぶつかって、振り返る。
するとそこにあったのは、大西が置いていった紙袋。
そっと手に取り、袋の口を開いてみれば、甘い香りの正体はクッキーだった。
星形に、プレーンとココアの市松模様。
岩崎と一緒に作ったんだろうな……と、思うのは、とても綺麗に焼けているから。
大西ひとりじゃ、こんなの無理。
多分……そう、こんな感じ……って。



