こっちを向いて、恋をして。


「あー……もう!どうせ気持ち悪いって思ってんでしょ?」

黙ったまま、何も言えずにいる俺に対し、痺れを切らした大西。

「いいよ、何だったら捨てても。それじゃ」

半ば投げやり気味に、吐き捨てるように言って、背を向けようとした。


だけど、


「っ……!」

一度見えなくなった顔がまた、俺の方を向く。

それだけじゃなく、さっきよりもぐっと近付いた距離。

「えっ……」

小さく声を上げ、驚いた表情をするのは大西で。

それは、


背を向け、教室から出て行こうとしたのを……腕を掴んで、引き止めたから。



自分でも、どうしてこんなことをしているのか分からない。

分からないから、何も言えなくて。


夕陽に照らされた大西の顔。

真っ直ぐに俺を見る瞳が、躊躇いがちに揺れて。


「あさ、ひ……?」


小さく名前を呼ばれた瞬間だった。

パタパタと、廊下に響いた足音。