こっちを向いて、恋をして。


授業中、見ていたわけじゃないけど。
さすがに隣から聞こえた音は分かる。

目を向ければ、いつもならうとうととしている大西は、俯いた顔を真っ青にしていて。


「……何してんの」

思わず小声で声をかけると、

「っ……」

『どうしよう』と言わんばかりの泣きそうな顔で、俺を見た。


その次の瞬間。


「そこ!」

まるで吹矢のような、先生の声。
「そこか」と続けると、鋭い目つきでじっとこっちを見られて。


「あ……」

蛇に睨まれた蛙状態。

怯えた様子で、大西が微かに声を上げる。


ほんと、何やってんだか。
この前もケータイ没収されてたじゃん。

自業自得。付き合いきれないと、小さくため息を吐く。


……でも。


カタッ。

静まりかえる教室に、響かせた音。

それはポケットから取り出したケータイを、机の上に置いた音で。


「俺です。すみません」


片手を軽く挙げ、声を出した。