「付き合ってくれてありがとう」
「いや……」
適当に軽く返事をすると、岩崎は「じゃあ」と言って、背を向けようとした。
だけど、
「あっ!」
何か思い出したように足を止めると、持っていた鞄を開けて。
「これ、今日の残りものなんだけど、良かったら」
そう言って差し出されたのは、ラップに包まれたロールケーキ。
黄色い生地には、控えめの生クリームが挟まっていて。
「……ありがと」
受け取ると、岩崎はふるふると首を振って、そのまま教室を出て行った。
そして、
「ひかり!」
大西の名前を呼ぶ、岩崎。
「あっ、ごめん!待たせちゃって」
「ううん、大丈夫」
静まり返った校舎の中。
廊下の会話は、教室まで筒抜け。
「中村くんと一緒に帰ったりしないの?」
「あー、それは」
声だけで何となく分かる。
大西のちょっと困ったような顔。