いつから、だっけ……。
いつからこんな風に思うようになったんだっけ……?

「えっと……」

何か言葉を。
必死に返事を探すけど、出て来ない。

すると、


「優しいんだね。石丸くんは」


「え?」

「詳しいことは知らないけど……でも、優しいから今のままでいいって、言ってる気がする」

「違う?」と続けて、岩崎は微笑んだ。

その表情に、息が詰まりそうになる。

優しい?
……誰が。


「残念ながら違うよ。俺は……」

ただ単に、今のこの関係を壊したくないだけだ。

想いを伝えてフられてしまうのが怖いだけ。

全然、優しくなんかない。

だって……。


「優衣ー?」

廊下に突然響いた声。
岩崎はもちろん、俺もハッとする。

その声の主は、今思い浮かべた奴だった。

「いけないっ」

ガタンと音を立て、椅子から立ち上がる岩崎。

「話の途中でごめんね」

申し訳なさそうに両手を合わされて、俺は首を横に振る。