本当は気付いていた。
腹いせとか、からかい半分の冗談じゃなく、大西が本当に好意を寄せてくれていたこと。
俺がどんなにひどいことを言っても、冷たい態度を取っても……周りをうろついて、離れようとしないから。
あいつのことなんてどうでもいい。
そう思えてしまえば楽なのに、関わってきた時間が長いせいか、胸が痛む。
形の崩れたチーズタルト。
しゃがんだまま、そのラップ部に手をかけた時だった。
「石丸くん……?」
静かな室内に響いた声。
振り返ってみると、立っていたのは岩崎。
「あれ? ひかりは? まだ来てない?」
首を傾げると、長い髪がさらっと揺れる。
そのまま岩崎はこっちへ近付いてきて。
さっきまで大西がいたことを、俺が言うよりも早く、
「えっ、それ……」
形の崩れたタルトに気付いた。