あの時と……同じ。
教室にひとり、取り残される。
だけど、あの時と決定的に違うのは、大西が見せた泣き顔と、
出て行こうとするあいつを、俺が引き止めようとしたこと……。
床には、ぶつけて落とされたチーズタルト。
ゆっくりとしゃがんで拾い上げると、ラップの内側でクッキー生地がバラバラになっていた。
『これ、は……朝日に食べて欲しくて、作ったんだよ……?』
『あたしは朝日のことが好きなんだよ……?』
好きって何なんだよ……。
思いながらも、震えた大西の声が頭から離れない。
『あたし、本気で朝日のことが好きだったよ?』
涙を浮かべて、そんなことを言われても、とても信じられない。
だって俺、大西に優しくとか全然してねーじゃん。
それなのに、どこをどうやったら好きになるんだよ……。
「はぁ」と、小さなため息をついて、頭を抱える。
……だけど。