こっちを向いて、恋をして。


迷惑そうな顔をしていても、受け取ってくれる。

……いつもなら、そうだった。


だけど、


「これ、あいつには渡さねぇの?」

「へ?」

「圭太」

「……」

朝日の口から出た名前が、中村くんのことだと分かるまで、少し時間がかかった。

名前をちゃんと覚えていなかったっていうのもあるけど……それよりも、中村くんのことを言われるなんて、全く思ってなくて。

「渡さないよ……?」

首を傾げつつ答えると、


「何で」


何で……って言われても、意味が分からない。

聞きたいのは、あたしの方だ。

何で今、中村くんが出てくるの?


浮かんだ疑問を素直にぶつけようとした。だけど、それより早く口を開いたのは朝日。


「圭太と付き合えばいいじゃん。あいつ、良い奴だよ」


「……」


あたし達以外には誰もいない教室。

朝日の声は充分なくらい空気を震わせ、あたしの耳に届いた。


だけど……意味わかんない。


何で朝日がそんなこと言うの……?