こっちを向いて、恋をして。


そんな事情を詳しく説明しなくても、だいたい察しはついたみたいで、優衣は黙って眉と目尻を下げた。


パタンッ!……と、下駄箱から床に、放り投げた靴。

少し離れた優衣を見ると、かがんで丁寧にかかとを揃えて、置いている。

こういうところから違うから、ダメなのかな……。

自分の女子力のなさに、しゅんとする。


「どうしたの?」

いつの間にか靴を履いた優衣に、声をかけられて、

「いや、何でもっ!」

慌てて靴に足を伸ばそうとした、その時。

「わっ……!」

あたしはバランスを崩して、

「っ……」

優衣が咄嗟に体で支えてくれた。


「大丈夫?」

「うん。ごめん!」

肩を借りたまま靴を履く。

近付いた制服からは、微かに紅茶の香り。


優衣の作ったパウンドケーキ、美味しかったな……。

本当はあたしだって、ああいうの作りたかった。

でも、今のあたしじゃひとりでなんて、到底無理で。
だからと言って、いつもみたいに“ふたりで”は、嫌だった。