こっちを向いて、恋をして。



……ハゲ林のせいで、大変な目に遭った。


人通りのなくなった廊下を、パタパタと小走りで急ぐ。

手には、やっと取り返したケータイ。


ちょっと授業を聞いていなかっただけなのに、補習プリントをやらされるとか、酷すぎる。

しかも、全問正解するまで返してくれないとか、もはや鬼畜でしかない。


当然、時間は膨大にかかってしまって。

放課後。運動部の声で騒がしかったグラウンドも、いつの間にか静かに。


もう、ホント災難でしかない……。

急いでいても、重いため息が溢れるほどに疲れている理由。

それはただ単に、数学のプリントのせいばかりじゃなかった。


“男が出来たのか”なんて、先生がとんでもないことを言ったりするから、クラスメートは大騒ぎ。

『えっ!ひかり、彼氏出来たの!?』

と、本気で聞いてくる女子に、

『石丸のことはもういいのかよー』

と、ニヤニヤしながら茶化してくる男子。


『お、男なんか出来てませんっ!』


ひと言、そう告げるのがやっとだった。