こっちを向いて、恋をして。


一歩足を踏み入れた教室。

一番奥、窓際の席に座るのは朝日。

グラウンドに向かって頬杖をつき、耳にはイヤフォンをして、こっちに気付く気配はまるでない。


ねぇ……中村くんと付き合うことになったって言ったら、少しはショック受けてくれる?

優衣まであんなことを言うから、本当はちょっとだけ気になってる。


だけど、実際に行動に移してみようと思わないのは、

くだらない嘘で、これ以上距離を広げたくないから。


さっきおはようって、言えば良かった。

それから『何で昨日、待っててくれなかったの?』って、頬を膨らませて。日曜日のことは忘れたように会話して。

それでまた元通りに……とか、今考えても遅いけど。


気付いて。
こっち向いて。

心の中で念じてみたけど、その声は届くはずもなく。


ポケットの中で、ブルブルと震えたケータイ。

【おはよ!】と、言えなくて後悔した言葉をあたしにくれたのは……中村くんだった。