こっちを向いて、恋をして。


チクン……と、胸の奥が痛んだけど、優衣に彼氏がいるのは事実だし、仕方ないこと。

そう、あたしは別に悪いことなんてしてない……と、自分に言い聞かす。


してない、してない。
悪いことなんて何も。

……でも。


カバンに荷物を詰め込む手を止め、もう一度振り返って見ると、朝日の表情はやっぱり浮かなくて。

「……優衣、ごめん!すぐ行くから、先に降りてて」

あたしが言うと優衣は、きょとんとした後すぐ、「あっ」という顔になって、

「分かった。じゃあね、石丸くん」

にっこり笑顔を浮かべて、出て行った。


教室にはまた……ふたりきり。


「あの……」

カバンを肩にかけたあたしは、ゆっくり近付きながら、声をかける。

言いたかったことは『ごめん』……だったのに、

「何?」

目も合わせず、適当に返事する態度に、何だかカチンと来たあたしは、

「ばかっ!」

大きく叫んだ。