こっちを向いて、恋をして。


盛大にむせ返ってしまったあたし。

周りの視線を感じなくもないけど、それどころじゃない。

「わっ、ごめん!大丈夫か!?」

ガタッと音を立て、席を立ち上がった中村くんに、あたしは咳込んだまま、何度も頷いて。

「もっ……いきなり変な冗談言わないでよ」

涙の溜まった目尻を指で拭きながら、やっと声を出せた。


「や、ごめん。そんなびっくりされると思わなくて」

「……」

びっくりするでしょ。
いきなり『付き合ってみない?』とか、言われたら。

おかげであわや、制服をオレンジジュースで汚す、大惨事になるところだった。


ムッとした顔で見ると、中村くんは苦笑して「ごめん」と、もう一度謝って。

「まぁ……」

話を聞かせたのはあたしだし、いいよって、返事しようとした。

だけど、

それより先に口にされた中村くんの言葉に、あたしは飲んでもいないオレンジジュースを、吹き出しそうになった。