こっちを向いて、恋をして。


……だって、今まで待ってくれないことなんてなかった。

火曜日と木曜日は、何だかんだ言いながらも、教室でお菓子を受け取ってくれていた。

あたしの隣には、必ず優衣が居るし。


それなのに、どうして?

どこかで優衣が先に帰ったことを聞いた?

それとも、優衣にも会わなくていいと思うほど、あたしのことが嫌になった……?


「大西さん?」

名前を呼ばれて、ハッと顔を上げる。

すると、中村くんはあたしの顔をじっと見ていて。

ビクッとする。
心の中を読まれていそうで。

……と、思ったら、


「それ、めっちゃ美味そうだね」


ニッと笑って、あたしの腕の中を指差した。


「ちょうだい」

「だっ、だめっ!」

咄嗟の行動。
慌ててブラウニーを背中に隠す……と、

「うわー、大西さん意外とケチ」

「なっ!」

白い目で見るから、思わず声を荒げそうになった。

でも、

「分かってるよ。それ、朝日にあげるんでしょ。明日渡せるといーね」

中村くんはそう笑って言って、手のひらをヒラヒラさせ、教室を出て行った。