こっちを向いて、恋をして。



ボウルの脇にまで付いたチョコレートを、何とか集め落として。

優衣の振るった薄力粉とクルミを合わせ、焼き上げたお菓子はブラウニー。


今日ばかりはあたしのせいで、失敗してしまうんじゃないかと思った。

だけど、焼き上がりはしっとり。可愛いハート型のブラウニーが出来た。


「上手く出来たね」

ひとつ味見して、微笑む優衣。
ホッとしながら頷いたのは束の間で。

押し寄せる緊張感。

あたしの勝負は……ここから。


先生のぶんと、これからみんなで食べるぶんを残して、ブラウニーを3つほどラップで包む。

可愛くラッピングしないのは、渡せる自信があまりないから。

でも、優衣もいるし、何とかなるかも。
意外と普通につるっと話せちゃうかもしれない。

そう自分に言い聞かせ、手を動かしていると、

「あの……ひかり?」

あたしの姿を見ていた優衣が、申し訳なさそうに声をかけてきた。